「起きたのか。まだ、三○分しか経ってないぞ」「三○分しか寝れなかったのか……いや、だけど随分とすっきりした感覚だよ。ありがとう、ローゲンたちが居てくれたお陰だ」
「ま、重要参考人の監視ってのもあるけどな。ウィズちゃんも目がさめたのか？」「ああ。お陰様で」
頷くと、ローゲンはさらに一歩踏み込んで俺の耳に口を寄せた。 ウィズに聞こえぬような配慮なのだろうけれど、今の状況ならば、俺に関する情報は何が聞こえてもどうでもいいはずだ。
「国王が呼んでいる。精一杯お前の擁護はしたはずだが……あの客船が沈没するってのは、一国としてなかなか大きな事態でな。どうしても、お前の話を聞かなければならないらしい」
「いえ、知っていたわけでは無いです。ただ、そうなのではないかな、と思っただけでして」「そうか。さすがは精霊術師、といったところだな」 そうして。 雑談はここまで、と言わんばかりに視線が厳しくなる。 俺は思わず、息を呑んだ。「ローゲンらから全ては聞いている。ライアと云う悪魔の事、それを取り巻く多くの悪魔との戦闘。その一つが、五日前の惨劇を起こしたのだと」「相違ございません」「ならばスプリンフロウ採取の際、悪魔を葬ったというのも事実なのだな？」「はい」 頭を下ろしたまま、頷く。 跪いたまま、王の沈黙を王が破るのを待った。 そうして暫くして、言葉が再びやってきた。「悪魔との契約が禁忌だと、貴様は知らなかったわけだな？」「そうか、わかった」「済まないな、手間ばかりを取らせちまって」「いや、大丈夫だ。むしろそんな事を言わないでくれ、現時点で俺は、お前らに感謝してもし尽くせなくらいなんだから……ま、少しウィズの様子を見ていてくれ。少し、混乱してるみたいだから」G-SHOCK 人気 ◇◇◇ 王室は、予想に反して全ての兵士と大臣とが引き払われていた。 玉座で頬杖をつく男は、その目立つ白いひげを湛えながら口を開いた。「ヒィ?クライト。調子はどうだ？」「はっ。お陰様で良好でございます」「しかし、少し痩せたようだな。カラ元気のように見えるが……」「――お妃様の予後はいかがでしょうか？」 話題を転換する。 しかしジェニワン?ノーシスは、少し驚いたように俺を見た。 今日は随分と、こんな目を見る。まるで化物にでもなったような気分だ。「スプリンフロウの効果で峠は超えた……だが、なぜ知っている？」関連記事：
