もちろん周りは、全てお墓。暗闇の中に、うっすらと立っていた。「そうだ!」そんなあたしは、ある名案を思いつく。
「わわっ!」慌てて手を後ろに引っ張った夜耶は怯えて、屈んで頭を抑えた。「夜耶、どうしたの?」
「菜々ちゃん……大きな声……出さないで……」半べそ状態で、夜耶はあたしに訴えてきた。
あたしは、夜耶の頭を撫でてあげた。「ごめんごめん、それより、名案よ」「何、菜々ちゃん?」
「よし、決まりね」とあたしは人差し指を突き出して、笑顔を見せた。そんな時、夜耶は不意に青ざめた顔を見せていた。「わわっ……菜々ちゃん……あれ……」いきなりあたしの手を離して、その場にしりもちをついた。あたふたした夜耶の顔、口で何かを言いたそうだけど声が出ない。さっきよりも青ざめた顔で、あたしの背後を指さしているが、震えて指が定まらない。「夜耶っ!どうしたの?」「あ、あれ……おばけ!」夜耶の指さす方を、あたしが振り向く。そこには、赤い点がふわふわと浮いているように見えた。始めは、手ぐらいの大きさだったものが、あっという間にランドセルぐらいの大きさに変わっていく。そして、それが火のように見えた。「な、何これ……」あたしは夜耶を背に、大きな火の玉を見ていた。大きく赤い点はやがて、炎の人型になっていく。あまりにもリアルな幽霊に、あたしに一瞬にして恐怖を感じた。そして、持っていた懐中電灯を落としてしまった。夜耶は、おずおずとあたしの方に顔を覗かせた。「あの男子たちに、あんなこと言われて、失礼しちゃうわ」ハミルトン 腕時計「な、なんですか……」後ろの夜耶は、不安そうな顔を浮かべていた。「チェックポイントが、終わったら、そのまま墓に隠れない?さっきのアイツらがやってきたところを脅かすの、いいでしょ?」「ええっ、だって……」あたしは、いたずらっぽく笑って見せたが、夜耶は困った顔を見せた。「なんか、あたしたち馬鹿にされて嫌じゃない。ここは、あたしたちの家だし、ね。夜耶だって、あんなふうに言われたくないでしょ」「……菜々ちゃんが、そういうなら」関連記事: