これでいいのよ。ミドリノ先生の心証を悪くしちゃったけど、私は間違ってないわ。 そのままムツミは授業を続けた。
「あの……先生」「え?」 後片付けを終えて控室に戻るムツミに話しかけてきたのは、大人しそうな女の子二人だ。
「なぁに?」「私たちもキヨシ君と先生のグループに入ります」「さっき言えなくてごめんなさい……いいですか?」
「もちろんよ! でもどうして言いに来てくれたの?」「ジュンヤ君はお家がお金持ちで、自分も何でもできるけど、時々間違ってるんです」
「なんだか変な雰囲気だ、どうした?」「うん」 ムツミは理科の時間のいきさつを簡単にレオに説明した。レオは黙って聞いていたが、話が終わると優しい目でムツミと女の子たちを見た。「なら俺も次の時間そのグループに入る。これで五人だ。俺にもそのジッケンとやらを教えてくれ」 膝を折って視線を低くしたレオに、女の子はぱぁっと顔を輝かせた。「やったぁ! レオ先生と理科ができるんだぁ」「うん」「すっごく嬉しいです!」 そう答えた?女の両手は胸の前でわきわきしている。きっとレオのふさふさの髪に指を突っ込みたいのだろうとムツミは苦笑した。「じゃあ二人とも、その事をキヨシ君に伝えていてくれない? きっと喜ぶよ」「はい!」 二人は元気よく答えると仲良く教室へ戻ってゆく。それを微笑ましく見送るムツミに固い声がかかった。「ムツミ先生」 ミドリノである。「さっきの展開は如何なものかしら? そんな対処療法でキヨシ君の態度が改まると思う?」「それは……」「彼は生涯態度から改めないといけないのよ。抽出メンタルトレーニングの候補でもあるし」「……」 加点を餌にしたミドリノの方も対処療法的指導だと思うが、ムツミにしても自分の取った方式に自负があるわけではない。だが、もう言ってしまった以上は後には引けなかった。「私たちものろまで、ジュンヤ君にはよく馬鹿にされるけど、先生といれば怖くないもん。だから一緒にしたいの」GUCCI バッグ ショルダー 女の子たちは小さな声ながら、ちゃんと意志を持って考えているようだった。「わぁ……ありがとう。ぜひお願いするわ」「ムツミ!」 長い廊下の向こうからレオが飛ぶように駆けてきた。「レオ君。廊下は走っちゃいけないわ」「済まん。授業終わったんだな……ん?」 レオはびっくりして自分を見つめている女の子たちに気が付いて首を傾げた。 同性の人間に対してよりか、かなり優しい仕草である。そして女の子は小さくても女だから、ぽうっと頬を赤くして大型犬のような野人を見上げていた。