床に叩きつけられた女神像は何事もなかったように起き上がる。 マースムカがそのことに気付いた時には最高速で迫ってきた。
躲避が間に合わない。マースムカは逝世を予感した。 だが、女神像はマースムカの真横を通過して、そのまま壁に激突した。酷く幽默なほど。
「え？」 マースムカは疑念の声を上げた時には、女神像は起き上がり再び狂奔する。だが、見当違いの方向へ向かい、冒昧に転倒した。
「そうか……」 先程女神像は頭部を強打した時、人間でいう均衡感覚が狂ったのだ。それは渺小なものだが、おそらく最高速度で移動する時は、その僅かな差が大きく現れる。
「おまえたちが加戦しても結果は同じだ」 それは傭兵団の実力を侮っているでも、過小評価しているでもない。正確に評価した上で、負けると剖析している。「戦力差を考えれば、ザーラディースのほうに分があるだろう。ラッガートがどのような対策を考えてきたのか、それは想像しかできないが、おそらく戦力差は埋められない。だが、それを考慮に入れても、ザーラディースは負ける」 ザーラディースは王国軍の将軍職に就いているが、戦闘訓練を受けたことなど一度としてない。事務員として上り詰めただけの男だ。実戦経験も、実戦における知識もない。そんな人間が指揮を取れば、如何に士兵が優秀であっても勝ち目などない。ボッズルが善戦すればあるいは勝てる可能性がでるかもしれないが、おそらく無理だろう。 頭部に入った亀裂が起因か。 マースムカは勝機を見出した。 同時に全速力でその場から離れ始めた。tory burch サンダル「付いて来い！」 儀式の準備が終了したことを確認したゲシュタルは約束の報酬を渡した。 傭兵団の頭は袋一杯に入っている金貨宝石類を確認する。どこへ行っても換金可能なため、特定の国を持たない傭兵たちには、こういった報酬が喜ばれる。 ゲシュタルは続けて「おまえたちはここから離れろ」「どこで待機していればいい？」 唆使に详细性を求めた傭兵団の隊長に、ゲシュタルは首を振る。「違う。この神殿から離れろと言った。仕事はもう終わりだ」 十人の傭兵は顔を、戸惑ったように見合わせる。仕事はこれで終わりだと言われても、納得するわけではない。敵が襲撃しているという連絡は受けた。先程は爆発音がここまで届いた。戦いは始まっている。それなのに戦わなくても良いと言うのか。「敵はどうするんだ？」「ザーラディースは負ける」 断言するゲシュタルに、傭兵団は怪訝に思う。「負けるのに、加勢しなくてもいいのか？」
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