第二百十三話 宮殿の中でもその一
宮殿の中でも 宮殿の中に入ると。そこでも普通にいた。
「モオーーーーーーーー」「牛、いるし」「しかもナチュラルに」 皆その牛達を見てまずは唖然となった。何と宮殿の中にも牛達が普通にいて歩き回ったり寝転がったり差し出される草を食べているのであった。
皆それを見てだ。また言わざるを得なかった。「あの、何でいるのかな」「それも普通に」「はい、牛だからです」
セーラの返答は無茶苦茶であった。「ですから」「いや、牛は家の中にはいない」 ダンが強張った顔でそれを否定した。
「けれどですか」「理解はできないわね」 それは無理だというのである。「話はわかってもね」「おわかりになられてもですか」「牛が神聖なこともお家の中にいる理由もわかったわ」 こうセーラに対して話す。「けれど。それでもいるのはね」「理解できませんか」「連合じゃ牛はお家の中にいないから」 話すのはこのことだった。少なくとも連合においてはどの国でも牛は家の中にいたりはしない。ましてやごく自然には、である。「だからね」「お部屋にも入ったりするのかしら」 ルビーは首を傾げさせながら述べた。「やっぱり」「はい、入ります」 セーラはルビーの問いにも答えた。「それが何か」「何かじゃないけれど」「ううん、物凄い話ね」 パレアナもまた言う。「とりあえず前は気付かなかったけれど」「シロナガスクジラ丸ごと出て来たからね」 ルビーはかつてセーラの屋敷に来たその時のことを思い出していた。その時はパーティーであり牛まで見えなかったのである。「普通はだ」「連合ではそうなのですか」「そうだ、ない」 こうセーラに述べる。「犬や猫とは違う」marc by jacobs「はい、牛は犬や猫とは違います」 珍しく話に接点があった。だがそれは違う意味においてだった。「この世で最も神聖な生き物ですから」「牛は特別」「それでなの」「確かに犬や猫も尊いです」 セーラは決して犬や猫を貶めても嫌ってもいなかった。実際のところ彼女はかなり博愛的な心の持ち主である。聖少女とさえ言われている。「ですがそれでもです。牛はです」「そこまで神聖だから」「それでお家の中にも」「いるのです」 まさにそれでだというのだ。「そういうことです」「話はわかったわ」 パレアナは一応その言葉を聞いた。そのうえでだった。「けれどね」関連している文章：
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