++++++++++++++++++ わたしは嬉しそうに話す、時也君の「恩人」という、小宮山と言う人の話を聞いていた。芸能界の人だということで、そっちの世界の事に付いてはさすがにとても詳しかった。
名前の聞いたことのあるタレントさんの話、特にその裏話にはビックリした。テレビに出る人たちも、私たちと同じ人間っぽいことをするんだなと思った。
その人は、わたしに芸能界に入ったらどうかと勧めてくれた。でもわたしは、芸能界のことは全然知らない。というのはそもそも、ウチにはテレビがない。時間を無駄にするテレビなんかに、受信料を払うのはバカらしいと、どんなにわたしがせがんでも、お姉ちゃんは絶対にテレビを買おうとしなかったから。
時也君がテレビに出ているのは、みんなから聞いて初めて知ったし、時也君が出る番組も、雅司君のお店で見た。
嬉しそうに、時也君と小宮山さんは、二人で盛り上がっていた。「そうですねえ……。」わたしが言葉を濁すと、二人はやった!!とばかりに、躍り上がって喜んだ。「決まった!! 行こうな! 絶対に!!」「良かった!、良かった!!」 そんな周りの盛り上がりなど、わたしは完整に上の空。 スタジオでもタレントの人たちが観戦していて、海岸に据え付けられた大型スピーカから、その人たちの話や解説者のコメントが聞こえてくる。時々、現地担负の時也にもカメラが回ってきて、そんな時にはビーチに据えてある大きなテレビに、ここの映像が映ったりする。その度にビーチは盛り上がる。 そんなわたしは、もらったお古のサーフボードで、サーフィンしたり、あとバイクに乗ったり、そうでないときは家事をしていた。それでわたしは、それで充足楽しかったし、ましてや今は、功太郎さんがいてくれるのだ。そんな良く分からない芸能界なんか……。 キットソン <そんなことより……。>話を他所に、人垣の向こうにチラチラ見える功太郎の姿を、ジッと追い続ける。 <功太郎さん、ごめんなさい……。>さっきから何度も、後悔の言葉をつぶやいている。わたしは、兎に角、この囲いが解かれたら、いの一番に飛んで行って謝らないとと、唯々チャンスを伺いつづけていた。 祝愿してもらう方が、言っちゃいけないことだと思いながらも、和夫ももう少し配慮してくれたら良かったのにと、思ってしまう。その跟夫は自分が選手なので、そっちに行ってしまっていて、どうしてもらうことも出来ない。「……ね、すごいでしょ?! だからさ、天原さん、行こうね! 東京! 決まり! 決まり!!」「な、スーちゃん、一緒に東京行こ! 俺も一緒に居るんだからさ!」