アルフが魔法陣を構築している。風魔法をこちらに向けて構えてきた。 アルフのやりたいことが分かった。アルフが上へ向かって魔法を撃つ力と、僕が下に叩きつけるように魔法を放つ。二つの力をぶつけることによって魔法を相殺させていき落下スピードをゆるめたいのだ。
できるのかどうかと言われたなら、分からないとしか言いようがない。理屈上はできるだろうが、実際に出来るのかどうかと言われたらかなり怪しい策だ。
まず、一番に問題なのは僕の魔力だ。人間を傷つけると血が出て体力がなくなるように、人間を魔法で傷つけると魔力を漏出してしまう。
ぶつける僕の魔法がアルフの魔法よりも弱かったなら、僕の風魔法はかき消される。つまり、アルフの風魔法をもろに受けてしまうのだ。
小さく鼻で笑った。だったらやるしか無いじゃないか。「……信じてるから、な」 腹をくくった。やってやろうじゃないか。僕は空中で魔法陣を形成する。アルフの魔法に負けないように全力で魔法陣を編んでいく。魔法陣が完成した。「いけぇ――っ!」 僕は風魔法を発動させた。ドームを逆にしたような形のエネルギーがアルフに向かっていく。 かといって、僕の魔法が強すぎたとしても失敗してしまう。僕には着地するための魔力など残っていない。落下スピードを抑えられずにそのまま地面に激突してしまう。それどころか、失敗した時は僕の魔法を直接に受けるアルフもただでは済まないだろう。トリーバーチ まあ、何もしなかったら僕の体が地面に叩きつけられて、もっと酷い状態になるだろうけれども。「多めに見積もって五分とは言えない。でも……」 同室生とは長い付き合いで、僕はアルフのことをよく知っている。それに、アルフも僕のことをよく知っているはずだ。もしかしたら、僕に合わせた加減もできるはずとなんとなく信頼できた。なによりもアルフは、こういったおいしい場面では絶対に成功させる奴なのだ。 男色迷路館ではトップバッターで戦い、敵を瞬殺していた。模擬戦争のときだって幻術を受けていたユーリを破ったし、さらにフェリンデールさんに攻撃されそうな僕を間一髪で助けてくれた。ドラゴンの村長の時も、ユーリ達を無事に救出したからあの場にいたのだろう。アルフはいつも一番に目立つことをしでかす。まるで、運命に好かれているような奴なんだ。 もちろん、たまたま活躍しているだけかもしれない。でも、今はこれよりも心強いジンクスは存在しないと思う。関連している文章:
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