「あのお爺さん、魂が複数あるわ」「複数？」「寧ろ分裂……。そうだは、一つの魂が分かれたような感じ」
解らないと首を傾げる昂輝とメニャースだったが、軒太郎だけが口元の右端を釣り上げ怪しく笑う。憑き姫の言いたいことが理解できている様子だった。
もう一度訊く昂輝。「憑き姫、解り易く説明してくれないか？」チラリと一瞬だけ昂輝の顔を見上げた憑き姫が、淡々とした口調で話し出す。
「この謁見室に入ってからずっと気になっていたの、同じオーラを感じさせる複数の魂に。在り得ないことなの」
「そんな訳で、とっくの昔にばれているんだ。大人数で隠れてないで出て来いよ」大理石の柱陰に隠れている輩を挑発する軒太郎が黒いロングコートの中に片手を忍び込ませコルトパイソンに指を掛けた。敵が複数だと聞いた昂輝も戦闘を予感して狼男の姿に変化する。そして携帯電話を握ると拳の間から三本ずつのカマイタチブレードを飛び出させて更に警戒を強める。玉座前に立つグスタフが話し出す。「メニャース殿、主から力を授かったにも関わらず、主を裏切ることは大罪デス。心得ておりますでしょうねデス」話が逸れた。しかしメニャースは、律儀に言い訳を返す。「グ、グスタフさん、これには深い深い事情があるニャア」「それとメイドロボたちから四天王の方々が、勝手口から裏門を目指して逃走をはかろうしていたとの報告も上がってきていますデス」「そ、それも誤解ニャア。あのポンコツどもの話なんか信じちゃあ駄目ニャア！」「メニャース殿、今回の件に関してはナイトメア公爵様に報告するまでもなく、死刑デス」「し、死刑！」「魂？」憑き姫は魂を様々な方法で感じ取ることが出る。魂さえ持ち合わせた存在ならば、十キロぐらい離れていても感知できるのだ。それが強い魂や妖怪変化の物ならば尚容易い。バリー財布その憑き姫が感じ取った異常と、姿を現したグスタフの存在。「だって、この謁見室の柱の陰には、複数の気配が潜んでいるの」その言葉に昂輝とメニャースが忙しくなく左右に首を振る。「ひ、潜んでいる……、何がニャア？」メニャースの質問を無視して語り続ける憑き姫。昂輝も憑き姫の話を優先させて聞く。「魂の形は一人ひとり異なる形。例え双子だって同じ形はありえない。指紋やDNAと一緒なの。なのに潜んでいるすべての魂が同じ形をしているの。ありえないわ」陰気な薄笑いを含んで軒太郎が言う。関連している文章：
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