「それは君の目に、恭助さんへの想いが表れていたからなの」「……きっと、そう」 僅かに頷き、しかし幸子は強い声音でだけど、と続けた。「それなら、気付かせたのは恭助さんの方よ。だって私、その頃恋なんて知らなかったもの。昔から恭助さんは私にとって特別な人だった。だけどこうして彼のことを考えるようになったのは写真を撮られなくなってからよ。なんで撮られなくなったのかしらと思ううちに、また撮られたい、私を見て欲しいって、そう思うようになっていったんだもの」
幸子の言葉を聞きながら、真は恭助のことを考えていた。 幼い姪の姿を見る度に、カメラを構えていた男。彼にとって小さなその少女にはどのような意味があったのだろう,関連している文章:
http://myantiquesonline.com/index.php?p=blogs/viewstory/445542。幸子の兄も含め、可愛がるための幼子であれば他にもいたはずである。 一人の少女の成長を追い続け、そうして幼かったはずの少女が少女の面影を残しつつ女であることを自覚し始めた時、恭助は彼女の瞳の中に何を見たのだろう。二十近く歳の離れた、恋すらも自覚していなかったその目に、何を恐れたというのだろう。レンズ越しに見た幸子の姿は、彼に何を与えたのだろうか。
「気付かせたのはあの人よ,関連している文章:
。だけど逃げ出したのもあの人だった,関連している文章:
。でもそれなら、置いて行かれた私はどうすればいいの。だから私は追いかけているの。ねえ、だけどきっと、これっておかしいのよね。きっと恋なんかじゃないのよ。呆れるほどに醜い、執着なんだわ」「……」「だけど、それを手放せない。手放したくない。一緒に落ちてしまえたらって、そんなことばかり考えてしまうの。恭助さんの幸せなんて願えないわ。あの人の人生の中に、いつだって私が居ればいいのにと思う」
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