第２話 夢は屯（たむろ）する （その358）
部屋の前まで来たとき、婦人が訊く。「入院される子供さんのベッドはご覧になったんですよね。」「はい、先ほど、一度。それで、お孫さんにもご挨拶させてもらいました。」源次郎は事実を答える。「あっ、そうだったんですか。それは失礼を致しました。千尋、ちゃんとしたご挨拶は出来なかったと思いますが。」
婦人は自分が病室を離れていたことを、少し後悔しているようだった。源次郎はそれを感じたから、次のように言葉を添えた。「里山先生がご紹介くださったものですから。」「そうだったんですか????。」「千尋ちゃん、ちゃんと挨拶されてましたよ。凄いなと思いました。」２人は部屋に入った。だが、源次郎は敢えて病室の入り口で待つ事にする。
健太とそれに付き添っている富がまだ戻って来ていない以上、まだあの呼吸器のようなものを装着しているであろう女の子のベッドには近寄らないのが賢明だと思ったのだ,関連している文章：
http://www.misthang.com/member/blog_post_view.php?postId=248580。何より、婦人と孫の世界に踏み込むべきではないと思う。案の定、婦人は孫のベッドに近づくと、おもむろにそこのカーテンで視界を遮るようにした。
やはり、あまり見られたくはない気持があるのだ。源次郎は、それでいいのだと思う。そうして待っている間に、改めてその病室の中を見渡してみる。入り口のドアを入ると、中央に、窓に向って歩行できるスペースがある。その両サイドに、ベッドが４つずつ並べられている。その右側の手前から２つ目が健太のベッドで、その奥が望月千尋。
つまり、あの初老の婦人の孫のベッドである。どうやら窓側からＡ、Ｂ、Ｃ???と整理されているようだ。だから、健太は４０８号のＣなのだ。一方の左側には、一番手前から患者が入っているようだ。男の子か女の子かは分らないが、誰かが寝ている。布団が膨れている。その次が、先ほど苦い薬を嫌がって廊下に脱走した男の子だ,関連している文章：
。確か、「順ちゃん」と呼ばれていた。今は、ベッドの上で腹ばいになって、絵本のようなものを拡げている,関連している文章：
http://www.1quanwang.com/home/space.php?uid=160&do=blog&id=1378。
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